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足元のパキッという音で歩みを止めると、辺りをゆっくりと見渡してから足元にそっと視線を落とす。
……ガラスだ。
朔が安堵のため息をつき、八つ当たりするように踏み付けてそれを粉々に砕く。
さっきからこんな事の繰り返しで歩き続けているのだが、何も怪しい(楽しい)物は見つからない。
当たり前といえば当たり前で嬉しいのだが、ここまで来てしまった以上何か見つからない事には悔しい。
朔が小さくつぶやく。
「早くなんか見つからねぇかなぁ……楽しいこと」
どうやら現実から逃げてあくまでも楽しいことを見つける気らしい。
朔の家は古くから伝わる流派『神我流』の道場で、もちろん朔もそこで小さい頃から鍛えられてきている。
朔は主に剣術を習っているが、一緒に体術も習っているため、そんじょそこらの奴相手のケンカなら負ける気がしない。
また体術と単に言っても神我流は、中国の方で言う『氣』を使った体術なので、やろうとすればコンクリートでも砕けるだろう。
だが今回の相手はそんなものが通用する相手かどうかもわからない。
「本当ならそろそろ幽霊が出て来て、そいつを俺が生け捕りにするつもりなのになぁ……あ、でも幽霊は触れないから生け捕りは無理なのか?あれ?じゃぁもしかしたら体術も効かないかもか?じゃぁ倒せねぇじゃん!?」
一人問答が面白い。
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