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ユーズの目から涙がこぼれ落ちる。
「誰をごまかすことができても私をごまかすことはできませんよ?私があなたにどれほど長く使えて来たとお思いですか?」
そう笑うとユーズが優しく男に口付けした。
「御自身を犠牲にしてまで民を守る……まったくあなたらしい考えです」
「お前に会えなくなる……それが一番怖かったのかもしれない。だから私はいつまでも動けずにいた……今日お前が背中を押してくれなければいつまでも動けずにいたかもしれない」
男が優しくユーズの髪をかきあげながらつぶやく。
「アルファは私とは別の人格だがしっかりとした奴だ、支えてやってくれ?お前ならわかってくれると……」
ユーズが男を睨む。
「わかりませんよそのようなお考えは!!」
「ユーズ……」
「なので理解できるよう私も共に地に降りあなたと道を共にします。よろしいですね?」
ユーズが男の目を強く見つめる。
すべてを決意したその目が、男を観念させたようだ。
「どうせ何を言っても無駄なのだろう?」
予想通りの男の言葉にユーズが満面の笑みを浮かべる。
それ以上その場に会話は無かった。
あったのは二度目の口付けだけ……
それは、少年の物語が始まる前日の夢だった……
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