弐陣『声が聞こえた』

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  どうも出るらしい…… そんな噂が流れ始めたのは丁度半年前くらいだろうか? 港にある大きな廃工場なのだが、火の玉を筆頭に、変なうめき声だか叫び声、窓に映る不気味な人影など近所でも有名だ。 噂としては、昔その工場に子供が入り込み遊んでいたら、機械に巻き込まれて事故死したらしく、その霊が今でも遊び相手を探してさ迷っているだとか、その事故で工場が閉鎖し、仕事がなくなり莫大な借金と社員への退職金に耐えられず自殺した社長の霊が子供への怨みで成仏しきれず、未だに漂っているだとか……とにかく現実味の在りすぎるものばかりだ。 そんなことだから最近では誰も近寄らなくなっているというのに…… 「幽霊なんているわけねぇっつーのに、たくっ何で俺がこんな所……」 まだ時計は午後三時だというのに明かりの無い暗闇の工場の中、懐中電灯の明かりを頼りに歩く一人の少年がつぶやく。 少年はとても整った顔立ちで、特徴と言えば鋭くキレイな切れ目だろうか? 身長は百六十五センチほど。 暗いのですらっとして見えるが、意外とがっちりしたその身体には黒に黄色のラインで縁取られた学ランを着ており、黒髪・黒瞳も合わせればライン以外は全身が黒ずくめである。
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