10/15
前へ
/18ページ
次へ
私は気付かないフリをして俯いた。食事に集中しようとしたが、かえってエリカ達の話し声がよく聞こえてしまった。 「ねぇ、あいつキモいよね。いっつも一人で居てさ」 エリカは、私とカナが今までいつも一緒に居たことを知っていたハズだ。つまりコレは、カナはもう私達の仲間だ、お前は一人だ、っていう宣言……。 「ほんと、なんか暗いし、鬱ってカンジ」 エリカの隣の子が笑いながら言った。 私は目を固く閉じて、もう何も聞かないように、頭の中を昔の思い出でいっぱいにした。 しかし、聞こえてしまった。 エリカに同意を求められ、「うん。ほんと、キモいよね」と言ったカナの声が……。 私は一瞬固まって、何も考える事が出来なくなった。脳の機能がパタリと働くのをやめてしまった。 うん。ほんと、キモいよね ほんと、キモいよね キモイヨネ―― カナの言葉が頭を回る。程なく働きを再会させた脳は、何だかボンヤリしていて、夢の中に居るようだった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加