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カナが、目を見開いて私の名前を呼んだ。
私はゆっくりと首を動かしてカナを見た。カナは目をきょろきょろと動かしながらもう一度私を呼んだ。
何かを探すようにしながら、ここにいるの? と呟く。
私は頷いた。私はここにいるよ、カナ。
しかし、カナの目が私を捉える事はなく、気配だけを感じ取っているようだった。私はふっと微笑んで口を開いた。
「カナは、強いよね」
するとカナは目の動きを止め、ふるふると首を振った。
「そんな事ない。強くなんか、ない……」
私は久しぶりに交わせた会話に、驚くよりも感動した。
「カナ、聞こえてるの?」
「うん。聞こえてるよ」
私の姿が見えないと分かったカナは目を閉じて、苦しそうな声を出した。
「ごめん……。私のせいだよね」
今度は私が首を振った。
「違う、私が逃げてただけ……」
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