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せめて着替えはしたいと思い、足を動かしてみると、既に私の操作下に戻っている事が分かった。 そうすると、不思議な事に服なんてどうでも良いという思いが頭に浮かんだ。 歯も磨かなくていい。私には行きたい所があるんだ……。 そう考えた後で首を傾げる。 今に行きたい所は、特にない。 でも、ここに突っ立っているのは面白くない。私は学校とは反対方向に足を踏み出した。 歩きながら、友達の家に行こうと思い付いた。 角を曲がった所で足を止める。 友達の家が、一つも頭に浮かばない。それどころか、友達の顔や名前すら分からない。思い出せない。 私は肩まである髪を乱して頭を振った。 父の顔は? 母の顔は? おばあちゃんの家は? 得意料理は? ……駄目だ。何も思い出せない。私は唇を噛み締めて唸った。
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