傷んでも人間

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駅員はいかにも不満気で、僕と女を交互に睨んだ。 女は1000円札を窓口に置くと、着いてこいと言わんばかりにハイヒールを鳴らして歩き出した。 とりあえず駅員に軽く会釈をして、歩き始めた。 女はかなり歩くのが速くて僕は早歩きをしなければ追いつけない程だ。 古びた日本家屋が見えて、女は足を止めた。 「早く入りな」 女は黒い長髪だった。 化粧なんてしていない。けれど美しい。 勿論、姉ではない。
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