傷んでも人間

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足を踏み入れると、線香の匂いが鼻を突いた。 「…落ち着く匂いだわ、ほらそこら辺に座りな。」 女はこちらを振り返る事なく言うと、台所の様な所に行った。 ざっという音をたてながら僕は畳に腰を下ろした。 「ほら、あんた。」 女はスッと急須を差し出した。 「…お茶、ですか?」 何がしたいのかよくわからなくて、初めて目を見て言った。 「煎れてみな。」 はい…と受け取った急須は意外と軽い。
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