百四十六ノ刻 顔の並ぶ町

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「降りてみねえ?」 「ダリーよ。てかこんな訳わかんねえ所さっさと抜けようぜ」 「これがドライブの醍醐味ってやつだろ。降りんぞ」 路肩に停車し友達は降りてしまった。 友人も渋々、後に倣った。 シャッターに妙な物が描かれていた。 巨大な顔。 老若男女、様々な顔。 絵にしては写実的で生々しい。 各シャッターに一人の顔が描かれている。 「おい!この顔よく見ながら歩いてみ!」 「嫌だ。早く行こうぜ、気持ち悪りーよ」 「いいから!見てろって!目だぞ目!」 溜め息を吐きながら言われた通りシャッターの顔の目を見ながら歩く。 絵の眼球がこちらの動きに合わせて動く。 えっ……? 思わず立ち止まる。 無表情なその絵は瞬きをした。 「おい!早く行くぞ!」 友達の肩を掴む。 「いいなあー、おれここにひっこしちゃうかなあー、みーんないいひとだしー、ひっこーしひっこしー」 歌う様なおかしな調子で譫言を繰り返す友達を車に詰め込み、車を無我夢中で走らせた。
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