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荒れた。
朝から酒を浴びる程飲み毎日。
アンタが死ねば良かった、ある日母親と喧嘩をし言われた。
何かが吹っ切れた。
何故しがみついているのか?意味の無い生に。
誰も理解しようとしてはくれない苦悩を抱え、優しさも素直に受け入れられない膿んだ精神を抱え生きる意味は無いと感じた。
ふらふらと歩いた。
兄と子供の頃に遊んだ河原。
此処でいいや。
河に入り死のう、こんな身体じゃ楽に溺れるだろう。
河に向かい歩いた。
肩を掴まれた。
ぷんと血の臭いが立ち込める。
振り返ると襤褸雑巾の様な物を身に纏った肉の塊。
見覚えが有った。
兄の遺体。
損傷が激しく、荼毘に付して葬儀は行われたと聞いた。
霊安室で車椅子に乗り見た兄。
生前の面影は全く無い。
諦めるな
頭に直接響く様な声。
ふざけんな!こんなになって生きる意味なんかねえよ!
手に力が籠もる。
大丈夫、お前は本当は臆病だけど優しく強い
もうなんもねえよ…
生きろ
兄は頭をくしゃくしゃに撫でた。
生前によくやられた。
その場に突っ伏して泣いた。
どのくらい時間が経ったのか判らない。
兄は優しく肩に手を置くとじゃあなと言った。
兄の身体は無数の蛍が飛び散る様な光となり消えた。
服には血の手形が残っていた。
なんとか立ち直り、職に就き生きている。
不自由な身で苦労も多いがひたむきに暮らしている。
辛い時はあの時の服を見る。
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