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顔を上げて俺は絶句した。
おいおいおい…まじかよ。
事前に作成したのであろうカンペを丁寧に読んでいるのはまぎれもなくあの女子生徒だった。
周りもヒソヒソと話し声がきこえる。
きっと可愛いーだの、タイプだの話しているんだろう…
俺はハッとし恐る恐る菜月の方に視線をやった。
うげっ…
菜月はキラキラした目で壇上を見つめていた。
あ―まさかこんな有名人になる女だったとは。
俺は再び壇上に目をやる。
少し緊張した面持ちで一字一句丁寧に話す彼女は、先ほど見た時より何だか人間味があって可愛らしくみえた。
「……これから1日1日を大切にし、有意義な学生生活を送りたいと思います。新入生代表、佐倉皐月。」
彼女は読んでいたカンペを丁寧にしまうと、体育館にニコッと微笑み一礼した。
「いいぞー!」
「かわいいぞ!佐倉ちゃん!」
厳かな式のはずが一瞬でライブ会場のようになってしまった。
司会の先生達が必死に静かにするよう注意するよう促していたが、一度盛り上がった会場はなかなかさめることはなく佐倉コールが鳴り響いていた。
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