風待陽子と島津絵里

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陽子と島津さんは、各自に割り当てられているロッカーを開け、一年生用の緑色のスリッパに履き替えた。ちなみに、二年生は紺色で、三年生は茶色のスリッパだ。 二人の教室は本校舎三階にある。毎朝上ることはもはや日課になっているものの、やはり階段を上るのは億劫だ。 一年一組から一年七組までが同じ三階のフロアであるが、目的地の一年七組の教室は階段から一番遠い。上り終えても、まだ歩かなくてはならないのだ。 もっとも、せっかく島津さんがついてきてくれたのだから、そういう愚痴は言えないけれど。 高所に取り付けられた窓からは、橙色の光が差し込んでいた。あと二時間もすれば辺りは真っ暗になっているだろう。 島津さんの華奢な体が、光に照らされて艶やかに輝いていた。 橙色の光は、完全に島津さんの引き立て役に徹していた。どこまでも島津さんを照らしている。 舞台上で派手にバックライトを当てられているかのように、島津さんは静けさに包まれた校舎の中で、存在感を放っていた。 その姿に、同性である陽子も思わず顔が赤くなってしまった。 何となく照れくさくなって、島津さんを直視できなかった。 だって、あまりに綺麗だったから。 そうだ。女からみても、島津さんは綺麗で魅力的な女性なのだ。 陽子は顔に赤みが挿したのをどうにか悟られまいとして、両手で頬を覆い隠した。 しかしその行動は端から見れば、不自然極まりないものだった。逆に、色々と勘ぐってしまうだろう。陽子だって、冷静さが少しでもあれば、そんなことはしなかったはずだ。 島津さんの芯の通った優しさ、強さが。陽子をそうさせたのではないだろうか。
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