風待陽子と島津絵里

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  水無高校には、「一年生の間は何らかの部活動に所属しなければならない」という非常に面倒な校則がある。 本来なら四月中に部活動への入部は完了していなければならないが、陽子はそれが出来ていなかったのだ。 つまり今の陽子は、いつまで経っても決めることが出来ず、だらだらと時間が過ぎてしまい、結局五月を迎えてしまっているという情けない状況下にいるという訳。 そういう状況を島津さんも分かってくれている。そして、そんな陽子のことを心配してくれているのかもしれない。 とはいえ、決まっていないものはどうしようもない。適当な部活に入部するという妥協案すら、陽子の頭に浮かぶことはなかったから。 ……いや、浮かばなかったのではない。 「妥協だけはしたくない」という気持ちが強すぎるあまりに、陽子は知らず知らずのうちに自分自身を追いつめていたのかもしれない。
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