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まだ決めかねている、という旨を、陽子は恐る恐る伝える。
「い、いやぁ……その……まだ、なんだよね」
自嘲気味に笑いながら言ったからか、曖昧な返事が気に入らなかったのか、島津さんは、
「そろそろ決めないと、まずいんじゃない?」
と声を大きくして言った。
島津さんは小柄ということもあり、穏やかな性格という印象を持つ人は多いけれど、実のところ芯の通った、結構はきはきと物を言う人なのだ。その上、友人の事を本当に心配してくれる優しさを持ち合わせている。
人は見掛けによらないとは言うけれど、それは本当だ。
入学して一年七組の初顔合わせの時に初めて見た島津さんの印象が「病弱で学校を休みがちな、護ってあげたくなるような人」だった陽子が言うのだから、間違いない。
今の島津さんの印象は、その時とは百八十度異なっている。
たった一ヶ月程度の付き合いだけれど、島津さんの魅力は鈍感な陽子だって理解しているつもりだ。
つもりなのだけれど……。
こればっかりは仕方がない。早く決めなければいけないということも、よく分かっている。
……担任教師には口を酸っぱくして言われているし。
でも、本当に決められないのだ。
担任教師に配られた「水無高校の部活動が全て記されたプリント」を一通り読んでみても、興味をそそられるようなものは見つからない。
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