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偶然にも、その会社は俺の自宅から目と鼻の先の場所にあった。
・・・このビルの二階か・・・。
こんなに近くにこんなビルあったっけ?
そんなことを思いながらもドアまで行くと、会社の名前がドアにも書いてあるのでここに間違いない。
あまり大きな会社ではなさそうだ。
中へ入るべくドアを開けた。
中に入ると、カウンターに座る、二十歳前後の女性が私を見るなり、
「課長、山本さんがお見えになりました。」
と、奥の部屋に向かって叫んだ。
この女性の行動に、俺は早速引っ掛かるものがあった。
まるで俺に前から会った事のあるかの様な反応だったからだ。
いくらリストラされる程度とはいえ、十年以上営業をしてきただけに人の動き位は分かる。
その俺が、この女性は俺のことを知っていると感じた。
すぐに奥の部屋から男性が出てきた。
五十代の、いかにも課長という感じの男性である。
先程俺に電話したのがこの人だとすぐにわかった。
「山本さん、未来商事へようこそ。」
課長はにこやかに俺に声をかけてくれた。
・・・こんなふうに迎えてもらったのは本当に久しぶりだった。
前の会社でも、転職活動中も、そして家でも・・・。
なんだかここに来たのが初めてではなく、やっと自分の居場所へ帰ってきた、そんな気がした。
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