竜とタトゥー

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「知らない」 あたしは煙を吐きながら目を逸らした。 ジンを一口飲む。 マスターはいつの間にか私の隣に座ってビールを飲んでいた。 そして、おもむろにあたしの太ももを撫でる。 あたしが何も言わないでいるとスカートの中に手を滑り込ませてきた。 「や…だ、め…」 パンツの上からクリトリスを刺激する。 「濡れてる…やっぱエロいこと考えてたんだ」 「考えて、ないっ」 「嘘ばっか。正直に言ってごらん?」 あたしは涙目になってマスターを見た。 「マスターのタトゥー見てたら…何だかセックスしたくなったの」 「へー…変な子だね」 辛辣な言葉とは裏腹に欲情を孕んだ手付きと目に翻弄される。 マスターはきっとSだ。サディストだ。サディストは一般的に己の受ける痛みを嫌う傾向があるけど、真性のサディストは違うのだ、というのを聞いたことがあった。 ──あたしの欲求は見事に満たされた。 お客が来るかもしれないという感覚が余計燃え上がらせた。 それからあたしとマスターはセックスフレンド宜しく並みに、会うたびにやった。 何回やっても飽きないし燃えた。タトゥーを舐める時、始めは画材の味がするのだろうかとか思ったが肌と同じだった。首もとの竜にかぶりつくと堪らない征服感が押し寄せてきた。 腕の蛇を舐めると屈伏させられている気分になった。 嗚呼。あたしはマスターにハマったな。 惚れたのとはまた違う。 ハマったのだ。 今までにあまり味わったことのない感覚だった。
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