竜とタトゥー

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竜とタトゥー

一人で夜の繁華街を歩く。 何となく今日は飲みたかった。 あたしは特別酒が強い訳ではないが、酔った心地が好きだった。 だから今日は飲む。 一軒目は、どこにでもあるようなチェーン店の居酒屋で飲んだ。 焼酎ロックで三杯。肴は漬け物と卵焼き。 一人で飲みに行くのは初めてだから多少抵抗はあったが店に入ってアルコールが脳内に浸透する頃にはどうでもよくなった。 千鳥足で一軒目の居酒屋を出て二軒目へ。 前々から気になっていたひっそりとしたビルの地下にあるバーに寄ることにする。 客はあたし一人だった。 店内はスロットやダーツなどが置かれていて案外広い。 カウンターに座り、ジンを頼む。 煙草に火を点けながら酒が出来るのを待った。 マスターの姿を眺めると長袖のシャツの襟や袖からタトゥーが覗いていた。 「マスター、タトゥー入れてるの?」 なんとなく聞いてみる。 ジンをあたしの前に置きながらマスターは私の顔をじっとりと見た。 その視線にどきりとした。どきりとした拍子に下半身が熱くなる。 「ああ、これ?自分で描いたの」 「嘘ー!よく見せて!」 あたしはマスターの手を取り、長袖をがっと捲り凝視した。 何度か撫でてみる。 擦ってもみる。これはマスターの嘘だな、と酒に浸った脳でぼんやりと考えた。 「えー、マスター器用なんだねー」 「嘘に決まってるでしょ」
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