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彼女の権限さえあれば、今ここで捜査から降ろすのは簡単である。
――帰れ。
たったその一言で、この探偵との関わりなど終わらせることが出来るのだ。
しかし、それでいいのか、彼女は決意しかねる。
他の賢者になんと説明するのか?
最重要機密となりうる事件の内容を話してしまった事はどう処理すればいい?
不正行為とは言え、魔術探偵として実力が証明されている二人を降ろすのが正しいのか?
クレアは、視界を埋め尽くす床を見つめながら、ありとあらゆる自問自答を行い、そして導き出す。
――最優先すべきは、早急な犯人の割り出しであると。
「……解りました」
ゆっくり立ち上がったクレアは自らの良心と理性を打算で抑えつけ、覚悟を決めた。
「依頼を継続します」
「……よろしいのですか?」
不安げな表情で耳打ちするルナ。
しかし、クレアの覚悟はもう揺らぐ事は無い。
「万一の時は、私が全責任を負います。ルナ、現場へ」
先程と打って変わった、ある意味彼女らしい毅然とした姿勢とその真っ直ぐな瞳を見て、ルナはゆっくり頷いた。
「了解しました。仕える人亡き今、我々碧騎士部隊は全面的に白賢者様をサポートさせて頂きます」
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