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俯いていたルナが思い出したように顔を上げ、大広間に向かって命令を飛ばす横で、クレアがアレルヤの煙草の箱を取り上げた。
「禁煙です」
「違う。見とけ」
クレアの鋭い視線に一瞬だけ自分の視線を交わらせてから煙草の箱を奪い返すと、おもむろに不快な壁に向かって、取り出していた一本の煙草を指で弾いて飛ばす。
四人が見守る中、クルクルと回転しながら飛んで行く煙草は、気色の悪い壁に当たり――
「きゃっ!?」
真ん中で真っ二つに折れ、壁に当たる前の何倍もの速度で跳ね返った煙草がクレアの顔を掠め飛ぶ。
「やっぱりな」
僅かに首を傾けるだけで煙草を回避していたアレルヤは、煙草に起きた現象が当然であると分かっていた。
大広間を飛行する煙草が玄関付近に墜落するまで目で追っていたハイネは、振り返って尋ねる。
「結界ですか?」
「あぁ、それも一級品の禁術と来たもんだ」
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