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呂帝国。それがユラが所属している国だ。
ここの地形はひじょうに変わっており、まるで漢字の“呂”のような形をしている。
“呂”の上の口にあたる部分が北部、下が南部と呼ばれ、1本の長い橋で繋がっているのだ。
橋の名前は“シクラン”といい、呂国語で平和という意味である。
その北部にある町のシャーナにユラが行く学校と家があった。緑が多く、鬱蒼とする密林は、何か得体の知れないものが潜んでいるように思える。
そして密林の舗装された道を歩くこと1時間。野原に出たところに学校があった。
一時間後にこってり絞りとられたユラが、げっそりとした表情で学校を出ていた。
「あっ!ユラ~、遅かったじゃん。今日はだいたい小説1冊分位の長さかぁ~。かなり長かったね~。」
えらく間延びした声で、シュワンが出迎えてくれる。シュワンはユラの大親友で、頭脳明晰、才色兼備、およそ身体能力以外の全ての褒め言葉が似合う女の子だ。
「いや、全然分かんないから!…はぁ、シュワンも一回怒られてみるといいわ。ホント最悪!ハゲやろ~!」
「まぁまぁ、そんなに怒らんでも~。てか私は怒られるようなことしてないも~ん」
涼しげな顔で言ってのけるシュワン。やっぱり天才は違うと思い、自然とため息が出た。
「はぁ、そういえば小説って何読んでたの?またつまんない歴史書?」
シュワンは大の歴史好きである。そこら辺の若い先生よりも知識は豊富だ。
「あぁ、コレ?“呂国史”よ~。でもこれは駄目ね~全然歴史に沿ってないし…でも、物語的には面白いかよ~」
「へぇー。」
「あっ、今つまらんとか思ったやろ~見る?教科書よりは面白いよ~」
シュワンが薦めた本でユラが眠らなかったことはない。そのことは十分分かっていたから、ユラ丁重にお断りする。
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