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「笑い事じゃないよ~。ほんと,あの二人には自分がモテるっていう自覚をもってほしいよ。」
「仕方ないわよ。あの二人は自意識過剰男じゃないもの。」
「まぁね~。」
理恵の綺麗な笑みと共に出された言葉に同意する。
確かにあの二人は告白されまくっていても,それを自慢したりしない。
そこらの下らない男達とは全く違うのだ。
「でしょ?にしても…あんたも罪な女だね。」
「何が?」
ニヤニヤする彼女に問い掛ければ,更にその笑みを深くする。
「櫻庭くんに福永くん,うちの学校のモテ男二人に言い寄られても,な~んにも感じてないんだもの。」
言い寄られてって。
「言い寄られてなんてないよ。たまたま一緒に帰ったり学校にきたりしただけだし。」
「ふ~ん…福永くんはまだしも,櫻庭くんが女の子と一緒に帰ってるところなんて,今までは一度も見た事なかったんだけど?」
「……。」
まぁ…言われてみれば,確かに。
孝宏はモテるのに,彼女…というか女の子と一緒にいる所すら見た事がない。
それこそ潤達と一緒にいるか,一人でボーッと外を眺めているか。
……でも。
たとえ女で喋るのが私だけだとしても,それが好意に繋がるかといえば…それは絶対とは言い切れない。
好意を寄せられているとしても友達として,そう考えた方が自然だと思う。
「私は女として見られてないって事かもしれないじゃん。」
「もう…どうしてそういう風にしか考えられないの?」
「だって,ありえないもん。私がモテるならまだしも,今まで告白された事なんて一度もないんだよ?そんな私があんなモテ組から好かれるなんて…ないない。」
私が笑って手を顔の前で左右に振ると,理恵は形の良い眉を寄せ,はぁ…と溜息を吐いた。
「本当,あの二人が可哀相。」
「何か言った?」
「…別に,何も。」
ボソッと聞こえた声がよく聞こえなくて,訊き返したのに何でもないって。
(何なのさ。)
親友である彼女に視線を向けても,ただハァ,と重たい息を吐くだけ。
人の顔見て溜息吐くなよ。
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