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―彼女は誰のもの?―
「あれ?今帰るとこ??」
机から鞄を取って立ち上がると,同じクラスの福永潤が話し掛けてきた。
「うん。潤も?」
「おぅ!じゃあさ一緒に帰ら「お前,今帰りか?」
いきなり聞こえた声に振り向くと,そこには同じくクラスメートの桜庭孝宏。
いつもはかけてない黒縁眼鏡におもわずキュンとした。
「う,うん。孝宏も今帰り?」
「あぁ。」
「ってオイ!オレが話してんのに邪魔すんな孝宏!!」
しっかりとシカトされた潤が眉を吊り上げて孝宏に怒鳴る。
…ちょっと可愛いかも。
でもそんな潤は相手にしようともせず,彼は更に私に向けて言葉を発した。
「なら,一緒に帰らないか?」
「え?」
「お前も電車通だろ?」
「うん。」
「オレも!」
「んじゃ,行くか。」
主張する潤を更に無視して,私の腕を取り歩き出した孝宏。
おもわず胸が高鳴った。
強引な筈のその行動も,彼がすると自然に見えるから本当,不思議だ。
「オイ,置いてくなって!」
そう言って潤が追いかけてきて私の隣に並んだ。
「…何か用か?」
「用かじゃねぇよ!こいつを先に誘ったのはオレだっつの!!」
「でもこいつが頷いたの見てないけど。」
「お前が割り込んできたから最後まで話せなかったんだろ!!」
…よく飽きないなぁ。
私を挟んで言い合う二人に溜め息が出る。
この二人は何かと私の所に来てはこうして言い合っている。
といっても,普段から仲が悪いという訳ではなくて。
いつもは二人して,他の男子と仲良さげにしているのを見る。
何で私の所に来た時だけこうなんだろ?
そんな事を考えていたら,あっという間に駅に着いていた。
定期で改札を通ってもずっと二人は言い争い続けている。
本当,よく続くなぁ。
「こんな口悪い奴,嫌だよな!」
「は?いきなり何??」
私の方に向いたと思ったら突然こんな質問。
……脈絡無さすぎ。
「口悪いのはお前だろ。オレはお前ほどじゃない。」
「どこがだよ!お前の方が悪いだろ!!」
「…はぁ。どっちもどっちだと思うよ。」
『え。』
溜め息吐きながら言った私の言葉に,途端に悲しそうな顔をする二人。
何?
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