第1章 ―潤と孝宏―

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「普通ここは"どっちも違う"とか言うとこじゃね?」 苦笑しながら言う潤におもわず鼻で笑う。 「私がそんな事言うと思ってんの?」 『いや。』 孝宏も一緒になって言う否定の言葉。 分かってるなら言うなっつの。 なんて話をしていたらあっという間に電車が来た。 にしても。 時間が時間だからやっぱり混んでる。 『はぁ…。』 おもわず三人で溜め息を吐いてから乗り込む。 と,ぐいっといきなり腕を引っ張られた。 「!?」 ビックリして前を向くと,目の前には見知った二人の姿が。 よく見ると彼らは他の人と私を遮るように立ってくれている。 私の後ろは壁だから,壁と二人に挟まれている状態になる。 「……。」 「これならお前,埋もれないだろ?」 「お前ちっちゃいからな。」 私がポカンとしていると二人がそんな事を言ってきた。 「ちっちゃいは余計。…でも,ありがとう。」 その気遣いが嬉しくて文句を言いながらも笑ってお礼を言ったら,二人とも 『おぅ…。』 と言ったきりそっぽを向いてしまった。 ? どうしたんだろ? なんてやり取りをしていたら,ゆっくりと電車が動き出した。 通りすぎて行く見慣れた景色をぼんやりと見つめていると頭をポンポンと叩かれた。 「ん?何??」 「お前の家,駅から近いのか?」 振り返ると孝宏が私の頭に手を置いたまま,話しかけてきた。 「ん~…10分くらいかな。」 何でそんな事訊くんだろうと不思議に思いながら答える。 すると二人で「10分か…」と呟くと同時にこっちを向いてきた。 な,何なの!? 『送ってってやるよ。』 ハモった。 そんな二人をポカンと見つめていると,やはりというか潤が孝宏に食ってかかった。 「送るのに二人も要らねぇだろ。俺が送ってくから孝宏は安心して帰れよ!」 「非力なお前じゃ心配に決まってるだろ。俺が送ってく。」 「非力じゃねぇよ!適当な事言ってんな!!」 …あの,ここ電車内なんですけど。 ヒートアップしていく言い合いに思わず額を押さえる。 そんな私の心情に気付く筈のない二人(特に潤)は,激しくいがみ合っている。 「ちょっと,静かにしなさいよ。ここ電車の中だから。分かる?公共の場なの。」 .
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