第1章 ―潤と孝宏―

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敢えて意識して低い声で二人を咎める。 変に注目を浴びるなんて勘弁だっつの。 「だってよ~。」 「だってもかってもない。…二人で家まで送ってくれる?」 『は?』 「まぁ,嫌ならいいんだけど。」 『送らさせていただきます。』 全く。 世話が焼けるったら。 にしても,どうして二人は私の事でこんなに言い争うんだろ。 潤も孝宏もモテるんだから私なんかの相手してくれなくてもいいのに。 基本,クールで無愛想な孝宏。 人懐っこく,男女問わず誰とでも仲良くなる潤。 対称的な二人は,うちの学校にファンクラブがあるくらいモテている。 本当,何でこんな二人が私なんかと? そんな事を考えていると,私の家の最寄り駅に着いた。 「あ,ここだから降りて。」 『おぅ。』 二人に降りるよう促してから自分も降りる。 「お,ここがお前の地元か。」 「オレらのとことあんまり変わらねーな。」 「そりゃあね。二駅しか離れていないんだし。」 そんなに物珍しいものでもないだろうに,二人はキョロキョロと見える町並みを見ていた。 「ね,あの二人かっこよくない?」 「ね!隣に居るのどっちかの彼女かな?」 …だだ漏れだぞ女子中学生。 地元の中学の制服を着た女の子がこっちを見てこそこそ話しているのが聞こえてきた。 ってか,どっちも彼氏じゃないし。 女とは,男女で歩いているとすぐにカップルだと思い込む生き物だと思う。 よくクラスでも女子がそんな話してるし。 私は人の色恋沙汰には一切興味がないから,そういうのは疎かったりする。 まぁ,興味がないものはないし。 孝宏と潤は女の子達が話してるのが聞こえていないのか二人で話している。 はぁ。 「うち,あっちだから。行くよ。」 よく考えたら私が先に歩かなきゃ二人は動きようがない事に気付き,何やら話し込んでた二人を促して歩き始めた。 五分程歩くと,大通りから外れ閑静な住宅街に着く。 微かに近くにある公園から子供のはしゃぐ声が聞こえるくらいで人も私達以外はいない。 「あ,あそこ。あそこが私の家。」 そう言って指差したのは,赤い屋根にベージュの壁の二階建て一軒家。 日当たりも良く,庭には花がたくさん咲いている。 .
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