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え,え,何?
私は突然の出来事に呆然としていた。
なおも二人は男を睨み続けている。
「な,何を言っているんだ君達は!わ,私は何もしていない…。」
「しらばっくれても無駄。おっさんがコイツのケツ触ってるとこ,オレらがちゃーんと見てっから。」
ケツ言うなっ!
なんて突っ込める筈もなく,私はただ目の前のやり取りを眺めていた。
私に痴漢したらしいおっさんは,50代くらいの頭のてっぺんがハゲかかったチビでデブなオヤジだった。
定番過ぎて突っ込みようがないわ。
おもわずはぁ,と溜め息を吐くと,それを聞いた潤が眉をしかめながら言ってきた。
「当事者が何傍観してんだよ。」
「だって,潤と孝宏が言いたい事言うから私何も言う事ないんだもん。」
潤達が成敗?してくれたおかげで私の怒りもおさまっていた。
だから何も言う事はない。
私の言葉に二人はあからさまな溜め息を吐くと"とりあえず次の駅で降りる"事を,孝宏が伝えてきた。
数分で彼が言った次の駅に着き,駅員に痴漢を差し出す。
軽く質問に答え,私達は再び学校への電車に乗った。
「またあんな事があったら大変だから」
と言って,今度は私を挟むように二人は立ってくれた。「ありがとう。」
『別に。』
なんて事ないように頷く二人がなんだかかっこよくて。
胸がドキッとした。
乙女のような自分に驚く。
ドキッとか,恋する乙女かっつの。
おもわず自分で自分に溜め息を吐いた。
そんな私を不思議そうに見てきた二人に何でもないというように首を振り,窓から見える景色を眺める。
もう少しで学校だ。
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