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遠くから蝉の声が聞こえる。空はどこまでも高く、どこまでも青く、どこまでも広がっている。
大層立派な屋敷の縁側に一組の男女が腰掛け、緩やかな時間に寄りかかっている。庭は手入れをされておらず、草木の生い茂る。誰ぞが、栄華は時により廃れるが、草木は時を経ても変わらないと詠んだか。
熱い季節が訪れたのだ。
「ようやく、夏ですね」
「君と同じ名。君の季節だよ」
二人仲睦まじく肩を寄せ合う。風が吹いては屋敷の中を駆け抜けた。
お互いの手を重ねる。女の右手には親指から中指までが欠けていた。男はその手に自分の手を重ねた。どちらともなく頬が緩む。
長い長い梅雨が明け、ようやく夏が訪れたのだ。
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