仁義と信念と

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20畳ほどの和室に、男が二人向かい合って座っていた。 一人は安楽椅子に鷹揚な態度で胡坐をかきながら腰掛けている。年の瀬は50の半ばほどだろうか。 もう一人の男は、ピシリと正座をし、20半ばほどの若々しさを備える顔立ちをしていながら、険しい顔立ち、そして鼻、額、右頬から半ばまで左上に傷を負っているのと、正直な話老けているので30半ば程にも見える。 部屋にある掛け軸や壷には、素朴でありながら品があり、高級かつ上質な物であることが窺い知れる。 張り詰めた空気の中、若い男が口を開いた。 「…おじき、本気ですかい」 応、と年の食った男は答え、しわがれた声で言葉を繋ぐ。 「…恭二。おめぇがヤクに対して乗り気じゃねェッてのは……よォく知ってるつもりだ。」 若い男は答えない。 年の食った男はもとより返答を期待していないのかすぐに言葉を繋ぐ。 「なァ、恭二…散々ヤク扱ってる組を潰してきたお前だが…」 年老いた男は手に持ったキセルを深く吸い、ふゥと中空に紫煙をくゆらせ、言った。 「どうする?おめぇ、ウチを潰すかい?」 その質問に恭二と呼ばれた若い男は暫くの沈黙の後、ようやく口を開いた。 「恩あるおじきに得物を向けることは…仁義に反しやす。」 「するってぇと」 「ですが」 年を食った男は期待したような声をだすが、途中で男が遮った。 「ヤクをばら撒く片棒担ぐってェのも…俺の信念に反しやす。」
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