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ふぅ、と年老いた男が溜息を吐く。
勘付いたのだ。
恭二を正面から見据えて、言う。
「おめぇ、組を抜けるつもりか。」
恭二は一瞬逡巡するような素振りを見せた後、一度頷き、
「ええ」
とだけ答えた。
「…そうかい…」
はァ、とさっきよりも大きな溜息を吐く。
「小指はいらねぇよ。」
年老いた男はキセルの吸殻を近くの机の灰皿にトン、と落とす。
瞬間。
「代わりに命ァ貰うぜ。」
ぱんッ!と鋭い音を幾つも立て、周りの障子の全てが開いた。
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