空っぽな箱

２

俺は、アルバイトをした。
人生ではじめてのアルバイトだ。

理由？

それは、撮影用のカメラを買うため。
必要な機材をそろえるために、各々一ヶ月がっつりバイトした。
一番重要なカメラに、レンズ、そして三脚。
ざっと考えただけでもかなりの費用がかかる。
だが、メンバー全員で購入するとなれば、一ヶ月くらいで大丈夫じゃないかと笑って、バイトをはじめた。

俺には、バイトのお金以外に、映画のための貯金もあった。
中学の時に父親に「映画を撮ってみたい」という話をしてみたことがあった。
そのとき、父親は

「だったら貯金しなきゃなー。映画は金かかるぞー」

と、がははと笑った。
酒を飲んで赤ら顔の父親は、息子のそんな言葉を真に受けたわけではないだろう。

だが俺はその言葉で、その日からこつこつと貯金をはじめた。

「映画貯金！」

貯金箱にでかでかと黒マジックで殴り書きした。