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[門出]
僕が退院を決意してからと言うもの、どんどん周りが騒がしくなっていった。
僕が退院するのにやらなくてはならない事が多いからだ。
まず、食事や体調などの管理が一層うるさくなり、検査やリハビリの量も増えた。そしてなにより、僕が退院するということで多くの人が挨拶なり手伝いに来てくれるからだ。
そんな日々が2週間近くたったが、ついに翌日退院となったら夜になるなり、やけに部屋に居るのが寂しくなってしまい、屋上にでた。
そして、風にあたりながらぼんやりと星を眺めた。
【何で今夜はやけに静かなんだろう…でも屋上出てよかった…ほしきれいだなぁ】
〈ギ~ッ〉
ちょっと古くなってる屋上のドアが鳴ったと思ったら誰かが寄って来た。
それは、入院仲間の純と茜だった。
「よっ、秀」
「やっほ~秀」
「やあ純、茜」
「それより秀、こんなとこいていいのか~、またひなたねぇにこっぴどく叱られてもしらねーよ」
「そうよ、風邪でもひいたら明日退院できなくなっちゃうよ」
「アハハ、心配してくれてるの?ありがとう、でも大丈夫だよ。今日は体調も良いし、もうそろそろ戻ろうと思ってたから」
「そっか」
「でも何か寂しくなっちゃうね。だって明日には秀と病室で話したり遊んだり出来なくなっちゃうんだよ」
「そうだな」
「でもほら、僕が検査とかでよく来るから大丈夫だよ」
「そうかな~」
「茜、秀が大丈夫って言ってんだから大丈夫なんだよ。なっ秀」
「そうだよ茜。いままでとそんなに変わらないんだから」
「そっか、秀がそう言うんだから大丈夫だよね」
「そうそう、心配しすぎ」
ケラケラと談笑していると…
「こらぁ君達今何時だと思ってるの!とっくに消灯時間は過ぎているでしょ」
そこに膨れっ面をしたひなたさんがやってきた。
「まったくしょうのない子供達ねぇ。いい、大人しく部屋に戻るなら今日だけお咎め無しにしてあげる。だから…今から10数えるうちに走らず慌てず、まっ直ぐ部屋に戻りなさい。それじゃあ、いくわよー。い~ち、に~いさ~…」
「ごめんなさい」
「おやすみなさい」
「ひなたねぇまたね」
それぞれ言って僕達は部屋に戻った。すると部屋に入る直前に
「秀、退院おめでとう」
「俺達明日見送りいけないけど…頑張ってやれよ」
「うん」
「無理しないでね。秀すぐに体調くずすから」
「ありがとう、それじゃあまたね」
そう言って僕達はしばしの別れを告げた。
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