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「…悪かった。少々おふざけが過ぎた…それに君には隠しても無駄みたいだし、全てを話そう」
ピリッと空気が張りつめた。
「確かに、普通の退院とは少し別物だ。でも君が望むなら本当に2週間後に退院できる。まあ、定期的に通院はしてもらう事になるけどね。後、君がどのくらい生きられるかだけど…それは君しだいだ。このままで行けばもって1年半。もっと拘束を厳しくしたとして2年。次に退院したとして、考えると…もって1年って所かな」
「そう…ですか…」
「どうするかは自由に決めてもらって構わない。…また後で答えを聞きに来るよ。一番だと思う方法を考えなさい」
「はい…」
「それじゃ…失礼するよ」
「ありがとうございました」
そういって橘先生は僕の病室をあとにした。
橘先生が去った後、僕はこれからの事や先生、家族、友達…いっぱい、いっぱい考えて過ごしていた。
【…そう…か、分かってはいたけど…ちょっときついな。でも、知らないよりは、よっぽどいいか…。父さん達は…きっと知ってるんだろうな。次会ったら何て言われるんだろう…でも…僕は…】
そして…その日の夜。僕は橘先生とひなたさんを病室に呼んだ。
「遅くに呼んだりして、すみません。でも大事な話だから…直ぐ二人に聞いて欲しかったんです」
二人は、静かに話を聞いてくれた。
「僕は…僕がまだ知らない世界がたくさんあることを知っています。だから僕は自分の目でそれを見てみたい。そして、他にも叶えたい夢があります。たとえ…それが自分の命を短くするだけだとしても…そのために僕は退院したいと思います」
その瞬間、僕の命が残り【365日】と決まった。
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