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岳部さんは、僕の手をとり本当に喜んでくれた。そして、ついには泣き出してしまった。
「そんな…おおげさですよ、岳部さん。またお世話になります。大変だと思いますが、よろしくお願いします」
「そんな…大変だなんて…滅相もございません。岳部はまた秀坊っちゃんのお世話ができて嬉しゅうございます」
「秀、何をしてるの?早くいらっしゃい」
「はい、今行きます。もう岳部さん、そんなに泣かないで…あっ、お土産でお菓子を買って来たんです。休憩の時にでも皆さんで食べてください」
「ありがとうございます」
「それじゃ、また」
そうして僕は、久しぶりあった岳部さんに挨拶を済まし中へ入った。
「戻りました」
これがうちの帰った時に使う挨拶だ。
「秀」
靴をぬいで上がろうとした時、後ろから声がして振り替えるとそこには祖母の姿があった。
「秀…」
「お婆様…只今、戻りました」
「お帰りなさい。あぁ~こんなにも大きくなって。もっとよく顔を見せておくれ。本当に…まあ…よく帰って来たね。秀明といい貴方といい、まったくこちらに帰って来やしない。二人してこんなお婆に心配ばかりかけて…」
「すみません、お婆様。でも、お元気そうでなによりです」
「貴方は相変わらず口調が堅いねぇ。そこのところは昔のまんまだよ。どうにかならないのかい?」
「どうにか…といわれても…癖ですから…」
「そうかい、それじゃあ仕方ないねぇ。ささ、あがりなさい。今お茶の用意をするからね」
「ありがとうございます」
僕は居間へと向かった。
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