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《トントンッ》
「ど~ぞ」
「秀明…。入るよ」
「なんだ秀かよ…なに」
「ケーキ…買ってきたんだ。甘い物好きだったろう。だから秀明の分も…」
「いくつの時の話だよ…あっそ、それだけ?それならさっさとそれ持って出てってくんない。もう俺甘いもん嫌いだから」
「えっ…」
「だから、甘いものは嫌いなんだよ。俺が甘いもの好きなんて。何年前の話してんだよ…10年くらい前の話をすんな。そんだけたちゃ味覚も変わるっつーの」
「あぁ、ごめん。嫌いになってたんだ…あっでも、お茶くらい飲めるだろ?せっかく家族全員揃ったのに、ってみんな心配…」
その時秀明が何かを呟いたが、僕はうまく聞き取れなかった。
「えっ?…なに秀明?何かいっ」
「だから、うっせーつったんだよ。てめと茶なんか飲めねぇつったろ。10年近く帰って来なかったくせに…冗談じゃねぇよ、いいご身分だよな本当に。帰ってきたとたん、いきなり説教かよ。っざけんな!!今更兄貴面なんかすんじゃねーよ!!!冗談じゃねぇ、居間まで俺がどんなきもちで…」
秀明の声が曇った。
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