32人が本棚に入れています
本棚に追加
「秀明…」
《パシッ!!》
そっと肩にふれようとしたら、その手を思いっきり叩き跳ばされた。
「触んな!」
真っ直ぐに僕を視てきたその目は冷たく、何かが体中に突き刺さっていく気分にさせた。
「秀…明…」
「俺…この家出るから」
「えっ」
「え、じゃねーよ。知らなかったのか?親父と尚隆おじさんの約束。…まっ知ってた所で兄貴みたいに貧弱な奴は論外だけどな」
秀明はあざ笑って言葉を吐き捨てた。
「まぁこの約束自体は、そんなのも判断つかねぇくらい赤ん坊時から、俺か兄貴か…ってやつだけどな。だから俺は尚隆おじさん所に…ってわけ」
尚隆おじさんとは、僕の父側の伯父で父さんのお兄さんにあたる人だ。確かに、伯父さんの奥さん…叶恵伯母さんが子供ができないんだとか話しを聞いた事があったが…
「確かに叶恵伯母さんに子供ができないって話しは聞いたことあるけど…」
「そういうことだよ」
「だけど…」
「だけども、さってもねぇんだよ。家は親が二人とも名家の出なんだ。そんなの当たり前だろ」
「でも、だからって、そんなの…」
「あまいことばっか言ってんじゃねぇよ。だからあまいもんは嫌いなんだ。そんなだから、秀は長男のくせに当主にもなれねぇ、病気だって…治んねぇんじゃないのか!こんなんだったら、俺が入院したかったぜ…」
《パシッ…ぽろっ…ぽろぽろ》
気付いたら僕は秀明の頬を叩いていた。
最初のコメントを投稿しよう!