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新しい風の盾を出しながら、私は獣の様子を眺めてみる。
先程自分で潰した右前足はいつの間にか再生が終了しており、何事も無かったかのように獣の巨躯を支えている。
……それと、今の炎は確かに強烈だが、果たして『あの程度』で世界を滅ぼす事が出来るのか──
……いや、今はどうでもいい。
今はコイツを倒す事に集中しろ……!!
「『焼尽せしめん!!』」
「!」
『災いの獣』が唸り声と共に黒き炎を吐き出した。
三つ首から次々と、間断無く。
「『慈悲の盾(アールマティ)』!!」
一発目を避けようとした瞬間に目の前に巨大な盾が現れ、盾に直撃した炎の塊は凄まじい爆風を撒き散らして消えた。
私はレナのサポートに感謝しつつ、足場にしていた風の盾から飛び降りる。
直後に別の足場を作り、着地。頭のすぐ上を炎が通過していった。
そこからまたジャンプ。一秒後に足場が焼き払われた。
さらに跳躍の頂上付近で自分の背後に風の盾を垂直に張り、そこに足を叩き付けて推進力を無理やり発生させた。
「弐之奥義……!!」
盾の影に隠れながら、空中で居合の構えを取る。
前方から襲い来る炎は『アールマティ』が防いでくれる。
百舌がダメなら朱鷺で──
──え?
獣の姿が近──
バギャッ
「うぁっ!?」
……次の瞬間には激しい衝撃が襲ってきていた。
『アールマティ』は砕け、体勢は大きく崩れる。
一体……何が起こった!!
慌てて前を見てみるが、そこには先程までいた筈の『災いの獣』の姿は無かった。
「『ふむ……まだ慣れておらんのか、微調整が利かんな』」
「後ろ……!?」
魔王の声に振り返ると、獣は私の遥か後ろの空中に佇んでいた。
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