それはある種のエンディングのように

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   そこで一拍置いてから、愛歌は思いの丈を吐く。 「……それって、多くのヒロインからの好意に気付かない鈍感な主人公より――」 「――よっぽど最低な脇役だな」  愛歌の言葉を軽薄そうな笑みで受け取って続けると、彼女は無理矢理な笑顔を浮かべる。 「……やっぱり、堤は最低だよ」 「んな事、最初から知ってるよ」  苦笑と共に口角を軽く上げて答えると、彼女は少し困った風に「……ん、だよね」とぎこちなく笑う。 「……で、それを踏まえて言っとくけどね?」 「おう」 「好きだよ、堤の事」 「さっき同様知ってる」  余分なモノが無い、さっぱりした告白を、俺も短く単調な言葉で返す。 「例え世界中が敵に回ったとしても、私は堤の傍にいるわ」 「俺は魔王か何かですか?」 「主人公サイドは難しいんじゃないかな?」 「酷い話だな、否定はしないけど」 「因みに、付き合って、と言ったらどうなる?」 「今は断る、と返しておく」 「あー、そっかぁー……」  告白と無駄話が交錯する会話に一度、区切りが付くと、嘆息に似た声を出しながら愛歌は俺の上から退いて、隣にドサリと転がる。 「じゃあ、いつかはオッケーって事だよね」 「その間に気が変わる事を切に願うよ」 「あーあ、振られちゃったぁー」 「保留だ、保留」 「保留とかサッイテー」 「笑いながら言う台詞じゃねーけどな」
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