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車体の中央部分の乗車口から乗り込み、整理券を取る。
今日は特等席が空いている。
乗車口のすぐ後ろだ。ほかの席より少しだけ高い目線で窓の外を見られる。
いや、目的はそれではない。窓に写る窓の外の景色を眺めるのが、一日の最後の楽しみなのだ。
鏡に写したような、しかしそれが窓硝子であることによって、虚ろで淡い世界を作り出す。
まるで幼い頃、漫画で読んだパラレルワールドのように。
ギラギラとまるで都会に憧れているかのように、電飾が忙しく動き回るパチンコ屋。
テレビドラマで見る美容室のような喫茶店。
惜し気もなく外に展示した外車をライトアップしている車屋。
業務を終了したはずなのに煌々と看板の電気が着いている銀行。
幾つかのコンビニエンスストアーと幾つ目かの停留所を過ぎると河に出る。
河口近くの橋を渡るのだ。
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