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正門を抜けて、帰路を無言で歩く。
「一馬………」
不意に失言を漏らしてしまった。
「一馬くん………最後に見たのがロン君で………ホントに嬉しそうな顔してたね」
「そうかな…。」
俺見て安心するなんて……神でも仏でもねーのにな。
……会話が途切れた。
トボトボと俺と愛里は通い慣れた道を歩き続けた。
「私の家知ってるよね?じゃあ…あとでメールしてね」
パタパタと愛里は一人暮らしのアパートに向かって走っていった。
「はぁ……気が重いな」
夢だ…そう違いない。と、俺は近くにいたガンを飛ばして来る不良をぶん殴った。ガン飛ばすくらいなら殴って来いよって意味だろ?
「がぁっ!」
不良は後ろによろけると、すぐに俺の腹を蹴った。
「っ………」
俺は無言で、顔面ど真ん中を拳で打ち抜いた。
ガキンッ!と音が鳴って、不良が倒れた。失神したらしい。いや…卒倒と言うべきか。
「痛かったから……夢じゃないんだなぁ……」
すまないね。たかが夢かどうか確かめるために卒倒までさせちゃって。
俺は、財布から1000円を出すと(俺の貴重な財産だ。)、不良のポケットにねじ込んだ。
「Good-bye」
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