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狭い部屋にギッシリと積み重ねられた古い書物に囲まれた少女が一人。
ランプの焔を頼りに茶色い背表紙の本を大切に扱いつつ、指で文字を追っている。
「そ…こで私は…は…。
うーんやっぱり、こっから先が読めないよ。」
古い言葉で書かれた文章は、ユタの知識ではその先を読む事がてきなかった。
本を閉じて背表紙をなぞる。 小さくサインが書かれておりそこにはアーノルドと表記されていた。
「パパも空を見たのかな…?」
物心つく頃にはいなかった自分の父。
死んでいるのか生きているかさえ分からないでいる。
残されたのはたくさんの父が書き記した『外』の記録や資料達。
けれど殆どの本は古代の文字でユタには読めないでいた。
それでもユタとっては大切な想い出。
古い書物の独特な匂いはユタに心地よさをあたえる。
白いシーツにくるまりその心地良さに目を閉じるとそのまま夢の世界へ落ちて行った。
懐かしい匂い。
栗色の長い髪。
自分を呼ぶ懐かしい声。
脳裏によぎる優しい笑顔。
「ユリシカおねーちゃ…ん。」
その懐かしい名前を呟くと自分の寝言で目を覚ました。
「ゆ…め?」
段々と覚醒してくると目の前には見慣れた同い年位の少女が横たわって自分を見ていた。
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