第一章 始まりの鐘は鳴り響く。

5/35
前へ
/35ページ
次へ
夢心地で思いだす。 優しい匂い。 暖かいひだまりみたいな手。 綺麗な瞳。 透き通る声。 ユリシカお姉ちゃん。 天涯孤独なユタを唯一この村で面倒を見てくれた隣に住んでたお姉さん。 ユタとマリエルと3人でよく遊んでいた。 不思議なお話や『外』の世界。只、ある日突然パタリと居なくなってしまった。 何もなかった様に振る舞う村。大人に聞いても知らないの一点張り。 その時からユタは、この村に疑問を抱いていた。 「ユタ…寂しい?」 ユタの体を優しく抱きしめながら聞いてきた。 「マリエル…?」 「変だよね…。ユタは普通の子供なのに、何も変わらないのに…。」 「…………」 「ユリシカお姉ちゃんもユタも、ただ少し違うだけで…」 「マリエル…僕、大丈夫だよ…?」 「馬鹿ユタ。」 「マリエルが居てくれるだけで、僕幸せだよ。」 「ユタ…。本当はずっと傍にいてあげたいの。」 「うん…。」 「ずっと一人でユリシカお姉ちゃんもいなくなって…、寂しくないわけないよね…。」 肩越しにマリエルの声が震えている事が分かる。 大切な親友。 ユリシカがいなくなってから、毎日ユタの家に通い一緒にいてくれる優しい女の子。 「マリエル…。」 「早く大人になりたい…。 そしたらユタと二人で『外』に出て空を見に…」 叶わない夢だとしても… 少女達には遠くて絵空物語りでしか知らない空を確かに夢見ていたー…。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加