3話 赤ちゃん

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そのお客様は若いシングルマザーでした。 深夜0時過ぎに来店し、毎回赤ちゃんを連れて来ていました。 髪の毛は黒と金のツートンカラーで顔色は悪く、骸骨のようにガリガリでした。 従業員の間では「薬物中毒なのでは?」と噂される程です。 何故シングルマザーと分かるのか? それは毎回、違う男性と朝方までお酒を呑んでいるからです。 飲み放題料金で入室されるのですが、お酒とは別に「お湯ちょーだい」と赤ちゃんの粉ミルク用のお湯をオーダーしていました。 おかげさまで僕は自分の子供が生まれる前から、人肌の温度のお湯を作るのが得意になってしまったのです。 しばらくして、そのシングルマザーさんにも彼氏が出来たようで、 その後はずっと彼氏さんと来店される様になりました。 もちろん部屋でのイチャイチャ行為もエスカレートしていきます。 このカップルが最高に酔っ払っていた日に事件が起こりました。 閉店時間に退室し、料金の精算時に僕は異変に気づきました。 僕「??」 僕「お客様?お子様はどうされました?」 カップル「あぁ?…あれ?」 来店時に連れてきた赤ちゃんがいません…僕「今、捜して来ますので待っていて下さい!」 カップルは立っている事も出来ないくらい酔っています。 フロント前のソファに座らせ、従業員と手分けして店内を捜しました。 バイト「うあああぁぁ~!店長ぉ~!!」 女性トイレの方からバイトが叫んでいます。 僕が駆け付けると… バイトが泣きながら個室を指さしています… そこには… 頭から明らかに致死量の血を流して俯せに倒れている赤ちゃんが居ました… …すでに冷たくなって居ました… 携帯ですぐに110番し、カップルには赤ちゃんを捜している事にして ソファで待って貰いました。 赤ちゃんが死んでいた事を伝えると、逃げられると思ったのです。
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