2話 逆恨み

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春先の季節でした。 学生スタッフが卒業シーズンを迎え、新たにアルバイトを募集する事にしました。 通常の流れだと、まず電話で面接を希望する旨を伝えて頂き、 面接の日時を決めるのですが… ある女性が突然、面接したいとフロントにやって来ました。 腰まで届く黒いロングヘアーで、髪の毛はボサボサ… まるで友人の結婚式に私服で出席したかの様な 派手なワンピース… 魔女の様に長い爪… 化粧は赤い口紅のみ… 身長は175センチくらいでガリガリの細身… 一瞬、幽霊かと思いました 一目で…あ、普通じゃないなとわかりました。 その時間はアルバイトが少なく、フロントを空けて事務所で面接する事が出来ない為 店内で1時間程、待って貰いました。 その間、彼女はフロント前のソファに座り うつむきながらブツブツと独り言を言ってました。 僕「お待たせしました。コチラヘどうぞ」 と女性を事務所に案内し、面接を行いました。 僕「それでは履歴書を拝見させて頂きます。」 女性「…」 女性は無言で履歴書を手渡しました。 僕「×さんですね」 僕は一通り履歴書に目を通し、質問を始めました。×さんは29歳で職歴無し、通信制の高校卒業でした。 僕「当店を志望された動機はなんですか?」 ×「私は母と二人暮らしで、母が病気で倒れてしまい、私が働かないとダメなんです。雇って貰えないと困るんです。」 …? 僕「今までお仕事されていない様ですが、当店で頑張って行こうという気持ちはありますか?」 ×「…わかりません」 …… 僕「やってみないと分からないですよね」 僕「でも頑張らないといけませんよ?」 ×「…はい」 僕「まず、働くには髪の毛を少し切らないといけません。その爪もです」 ×「…」 僕「カラオケ店も一応飲食ですから」 僕「やる気があるなら髪の毛と爪を切って、明日また来て下さい。」 ×「わかりました。」 ×さんは席を立ち、挨拶もせずに事務所を出て行きました。 …まだ、社会を知らないんだな… この店からスタート出来れば良いんだけど… そう思ってた自分が心底、甘かったと思い知るまで… 時間はかかりませんでした。
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