空耳

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私は小さい頃から、時々、空耳を聞いている。 その中でも、一番心に残り、今でもはっきりと覚えている空耳の話しを・・・・・・。 確か幼稚園の年長さんの時の事だ。 夏休み、昼寝をしていた私を残し、母と弟は買い物に出掛けてしまっていた。 ふと目を覚ますと、外は薄暗く、夕立が来ていた。 慌てて窓を閉めたけれど、激しい雨音が部屋中に響いていた。 雷鳴らないとイイナ・・・ そう思ったのも束の間、激しい雷鳴が鳴り響いた。 何時もなら、しがみつく相手がいるのだが、今は誰も居ない・・・。思わず、泣き出した私の耳に聞こえたのは、 「泣くんじゃない。」 「落ち着いて。」 「大丈夫、大丈夫。」 「私が傍に居るから。」 と言うものだった。 その声は大きく、はっきりと聞こえ、一瞬、キョトンとしたものの、押し入れの中から布団と蚊帳を引っ張りだし、そこに潜り込んで、ひたすら母の帰りを待った。 母にその話しを何度かしているうちに、その声が亡くなったばかりの祖父の声だった事を思い出した。 きっと祖父は、幼い私が一人で留守番をし、大嫌いな雷に脅えるのがたまらなかったのだろう。 今では、お墓参りの度、仏壇にお線香をあげる度に、お礼を言っている。 その時は、怖くてたまらなかった!と愚痴
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