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昔から狸に化かされたとか、馬鹿にされたなんて話しを耳にした事が、1度はあるかと思います。
今から約20年も前の話し(う~!私も歳をとったなあ)弘美と私は深夜ドライブを楽しんでいた。
当時住んでいた場所柄、秩父方面が多く、何時も山の中を走っていた。 又、当時の私は未だ、免許をとっていなかった為、助手席専門家でもあった。
夜の7時頃出発し、秩父市から大滝へ向かい、小鹿野へ抜けて、再び、秩父市に戻り、皆野に出て、さて、峠を越して帰ろう。という事になり、三沢から高原牧場を抜ける峠道に入った。確かに、ラジオは午前1時を知らせてくれた。
普段なら、ゆっくり走っても、1時間もかからずに峠を越してしまうのだが、その晩に限って、走っても走っても峠を抜けるどころか、1本道の筈なのに、山頂の高原牧場に出ない。
今とは違い、20年前には、カーナビなんぞは無かった。地図と道路標識、そして記憶と勘が頼りだった。とは言うものの、2人で走り慣れた道の筈だった。
段々焦ってきてはいた。でも、深夜の山道のせいか、すれ違う車もいない。しかも、霧まで出て来て、フロントガラスに移るのは、ぼんやりとしたミルク色の景色のみだ。
お喋りが少しづつ、少なくなって行った。 そんな時でも、ラジオは律義に1時間おきに時間を教えてくれる。
2時。
3時。
4時。
周囲が少しだけ薄明るくなって来た。
5時。
どう見ても、東秩父じゃあない!
此処は一体何処なんだ?
弘美と私は顔を見合わせてしまった。
確かに、峠のカーブ以外ではハンドルを切っていない。
まして、山頂の高原牧場に辿り着いていない。
秩父、皆野側からだと、本当に1本道で脇道もない。
なのに、私達が辿り着いたのは、都幾川村。
確かに、高原牧場を越え、直ぐの脇道を入ると、都幾川村の方面へ行くのは行くのだが、途中、峠の茶屋や自動販売機の並ぶ場所がある。
いくら霧の中だったとは言え、そんな明かり、1度も無かった。 それに、時間もかかり過ぎている。
弘美には、私といると時折、こういう事がある! と責められてしまったが、一体、何処をどう走り、どうやって辿り着いたのか、未だに判らない。
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