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「少し、温かくなってきたかな」
五月ももう半ば。あと二週間も経てば制服も夏服になる。
だが、やっぱりまだ少し肌寒い。
「うーん」
今の状況を冷静に考えてみる。
・時刻は夜
・車で送る
・私は中学生
・相手は成人男性(多分)
「大丈夫かな…」
状況だけ羅列すると目茶苦茶危ないどころか、もう自分から襲われに行ってるようなものだ。
「ま、まぁアキラなら大丈夫だよね」
言葉遣いは少し荒っぽいし、行動も少し乱暴だが、誠実な人間だ。
態度で私のことや、なのは達のことを真剣に心配してくれているのがわかる。
あのロンドンの時にアキラが怒ったのも、詳しくは知らないが、誠実な内容だったであろうことは伝わってきた。
だから、彼に限って私を襲うなんてことはないだろう。
「うん、アキラなら大丈夫だよね」
「いいやどうかな?アーチャーって奴ァみんな騙し討ちをやるからよ。アサシンみてぇにな」
いきなり頭上から太いが、まだ若い男の声が聞こえてくる。
私は咄嗟に後ろを向くと共に、距離を取った。
そして私は、その声の主を見て驚愕した。
青い甲胄に、紅い長い槍。そして私を居抜く様に見据える殺気に満ちた真紅の瞳。
そして隣りに立つ、魔力を帯びた球体を展開している女性。
「貴方たちは……!」
「察しはつくよな?オレはサーヴァント・ランサー。そしてこっちはオレのマスターだ。よろしく頼むぜ」
「貴方はアーチャーのマスターで相違ないですね?」
やはり…サーヴァントだったか…!
話しには聞いていたが、とてつもない魔力を持っている…。
「まぁこんな街中で戦うのもアレだ嬢ちゃん。場所を変えないか?」
私は少し迷った。アキラが来るまでの時間稼ぎをするかしないか…。だが、私は結局、
「わかった。周囲の一般人に迷惑なんてかけたくない。どこか場所に希望はあるか?」
私は結局、一人で戦いに受けて立つことにした。
「話が早くて助かるぜ嬢ちゃん。ついてきな!」
ランサーとそのマスターが勢いよく飛翔する。私も即座にバリアジャケットに着替え、その後を追う。
……聖杯戦争が、始まるのか……
私は、感覚的にそれを感じていた。
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