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「ここらでいいか」
そうランサーは言うと、隣町の学校の校庭に降り立った。
私も校庭に降り立つ。
「じゃあ始めっか?アーチャーのマスターさんよ」
「…いつでもどうぞ」
「そうかい。…なら、行くぜッ!」
そうランサーが叫んだ瞬間、私の体は空を舞っていた。
接近して紅い長槍の横薙ぎ。咄嗟にバルディッシュで防げたのは奇跡だった。なにしろ、“相手の軌道が速すぎて見えない”。だが、斬撃は防げても衝撃は残る。その衝撃で私は吹っ飛ばされた――。というわけだ。
「くっ…バルディッシュ!プラズマラン…」
「遅ぇな」
空中で態勢を立て直し、魔法を放とうとするその一瞬で、ランサーは私の真上まで移動していた。
迫る踵音し。私はそれを無防備に直撃する。
地面に物凄い勢いで激突する。
体中を襲う激痛。目の前がチカチカして視界が安定しない。
だが、態勢を立て直さないと失われるのは私の命―――!
体になんとか力を入れ、足をバネにして前に飛ぶ。
一秒も間がなく、私のさっきまでいた場所にクレーターが出来上がる。
「良い動きするじゃねぇか」
「くっ…バルディッシュ!サイスフォーム!」
姿を確認せずにとにかく横に薙払う。
相手の武器は槍。“突き”を主体にする武器だ。つまり自ずと攻撃は直線方向――!
「ぐおっ…!」
予想通りランサーは突きを放ち、私の薙ぎが防いだ。
だが、ランサーの突きの威力は私の予想を越えた威力だった。
二メートルくらい後ろまで突きを受け止めた衝撃で後退させられる。
「大丈夫?バルディッシュ」
『Yes,sir』
とりあえず胸を撫で下ろす。今回は大丈夫だったが、やはりバルディッシュ自体が不安だ。
あの威力の突きを、そう何発も受け止めてたらバルディッシュが先に壊れてしまう――!
…仕方ない、か…
「バルディッシュ、ザンバーフォーム!」
バルディッシュの形状が大剣状に変わる。
出力もサイスフォームから格段に向上する。
「ほお…鎌から、剣に変えたか。しかし嬢ちゃん、面白い魔術使うな…。見たことがないぜ」
「………」
「おいおい、敵だからって世間話も無しかぁ?全く、世知辛い御時世だねぇ」
今は、ランサーの軽口に耳を傾けている時ではない。
「いくよ、バルディッシュ」
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