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「ホントか!?」
「あ、あぁ」
「よかったぁ……」
生き返れる。その確証を得た瞬間、安堵のため息が出た。体はないが。
「生き返らせるのはいいんだが、一つ問題があってな……」
しかし、神の話はそれで終わりではなかった。
「問題?」
「あぁ……。お前の体はあのクレーンに潰されてしまってな」
「あ……」
そうだ。俺は工事用のクレーンが倒れてきてそれの下敷きになって死んだんだ。
「それで、今このような状態だ」
そう言うと、俺の目の前に光の玉が一つ現れる。その中には、ぼろぼろになった人間の体が収められていた。
「……このままで生き返らせると?」
一瞬嫌な想像が頭をよぎる。
「いや、さすがに機能の停止した体に魂を入れ直しても生き返らん。この体はこちらで修復する。それまでの間、別の体に入っていてくれ」
別の体、というのはその間俺は別の人間になるということだろうか。
「ちょっとした休暇だと思って気楽に待っていればいい」
「わかった」
手違いで殺されたんだ。それくらいのボーナスはあってもいいだろう。
「では、体の修復ができ次第また連絡する」
そう言うと、神の手から光が放たれた。それに包まれると、俺の意識は何かに吸い込まれていくように少しずつ消えていった。
※ ※ ※
俺はもう一度自分の手を見た。どこからどう見ても俺が朱美の誕生日プレゼントとして買ったペンギンのぬいぐるみの手だ。
「これが、代わりの体……」
動ける体があるのは嬉しい。嬉しいけど……。
「体が直るまでの間……ずっとこれかよ……」
自分の横にある自分と同サイズのぬいぐるみたちを見る。
「はぁ……」
そのつぶらな瞳が「現実を受け止めろよ……」とささやきかけているように見えてヘコんだ。
「とりあえず、ここがどこかだけでも把握しておかないとな……」
落ち込むのをやめ、俺は自分の周りの景色を見渡した。
薄いピンクの壁、可愛らしいベッド、勉強机、大量のぬいぐるみ……。
どうやら女の子の部屋のようだ。
「ん……? このぬいぐるみ……」
自分の横にあるぬいぐるみに、どこかで見た覚えがあった。それがどこだったか必死に思い出そうと記憶を遡っていると、ここに向かってくる足音が聞こえてきた。
(やばい! 誰か来る!)
その瞬間俺は自身がぬいぐるみであることを思い出し、何故か正体を知られるのはまずいと思い立ち人形のふりをした。
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