幸福ナ終焉ノ謳

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泣かないで 私はこんなに笑っているのよ だから泣かないで 思えば幸福な人生でした 過ぎ去った今だからこそ 笑えることなのだろうけれど 傷ついたり 傷つけたり 泣いたり笑ったり 怒ったり喜んだり たくさんの表情がある人生でした 愛したり愛されたり 幸せが形へと変わっていきました はつ恋の人の名前は今でも忘れません 初めて恋人になった人も忘れていません たくさんの愛を知りました それでもやっぱり一番は 私の傍でおじいさんになってくれた人です しわしわの皮膚が嫌でした 真っ白になっていく髪が嫌でした 落ちていく体力が嫌でした 痛む関節が嫌でした けれど今となっては誇らしいものです あぁ 目の前で泣く 愛しい家族達よ 私は良いお婆さんでしたか? 貴方達が産まれてきた日を 昨日のことのように覚えています 不安が喜びに変わる瞬間でした お腹を痛めて痛めて産んだ子よ 愛しい我が子が産んだ子よ この先色々あるでしょう けれど忘れないで 私の幸せは貴方達でした たくさん笑いなさい たくさん泣きなさい でも怒るのは少しにしなさい ありがとう よく私と出会ってくれましたね ありがとう お別れは辛いけれど 充分に長く長く生きました これが幸せな終焉なのでしょうか? さようなら… .
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