運命が動いた日

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途端に、その棒の先の丸い物体から強い光が放たれる。 「やめてください!魔王の手のものに気づかれます!」 ヨウコが慌てて姫を押さえつけようとしたが、光は収まらず、さらに強い光を放った。 「うわぁ!姫さまに消されちゃうよぉ~!」 「わっけわかんねぇなぁ!なんだって助けた奴に消されなきゃなんねぇんだ!」 千晴と池谷はパニックに陥り、影に身を隠そうとしたが、それも間に合わず、その光は東京ごと、千晴たちを包みこんだ。 同時に東京以外の日本を黒い、姫の放った光と対照的な光に呑みこまれた。 否、それはただの光ではなく、姫を発見した黒い虫の大群が日本全土へと増殖を繰り返して広がり、同時に発光したためのものである。 両の手の平がじんわりと熱くなるのを感じて、千晴はまぶしい光の中、ゆっくりと目を開けた 。 真っ白で池谷やヨウコの姿はどこにもない。 不意に自分の両手を見ると、その手もまた発光していて、透けているようであった。 やっぱり、消えちゃうのか、と半ば諦めたように再び目を閉じかけた時、「お願いします」という姫の声が聞こえてきた。 「へ?」 わけがわからず、辺りを見回して見るがやはり光の中にいるためか、自分以外の姿は見えなかった。 「お願いします。魔王を倒してくださいませ」 「僕が?」 「ええ、あなたが」 姿が見えないに関わらず、姫はどこからともなく千晴に淡々と話しかけてくる。 「私は出来る限りの力をこの地に放ちました。私の力では魔王には敵いませんが、あなたたちならきっと・・・」 「あれ?もしかして僕って夢見てるの?」 なんてベタなネタだろうと言おうとしたが、それは姫の言葉に遮られてしまう。 「きっと助けてくださいましね・・」 姫がそう言うと、再び強い光に辺りが覆われ、今度こそ千晴は目を閉じた。
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