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「ただい……。またかよ…」
ミノルはため息混じりに玄関のドアを乱暴に閉めた。
2Kの6疂間には明かりが無く、がら開きにされた襖からぼうっと白い腕か投げ出されているのが見える。
隣に聞こえるくらいのドアの開閉音を立てたのに、腕はぴくりともしない。
ミノルはすぐに部屋に入り腕と同じ青白い顔のまま転がっている同居人ー、ナリの呼吸を確認する。
すぐそばの火燵テーブルの上には、アルコール臭のするグラスと、大量の薬の空シート。そして大学ノートの切れはしに殴り書きされた「サヨウナラ」。
(またやりやがった!)
ナリの身体を横に傾けさせながらミノルはテキパキと処置していく。
これで何度目だろうか。
幸い、今回は救急車を呼ばずに済むようだった。
「何でなんだよぅ…このバカッ…」
何も反応しないナリに向かって呟く。
明日には目覚めるだろうか…。
不安なまま、ミノルはナリを見つめていた。
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